杉山 美佐選手の03Megavalancheレポート



「私もあの広大な景色の中で黒い点になりたい。」
そう思って旅の計画を立て始めた。

2003年7月25日〜27日の3日間にわたり世界最大のフリーライドレース
MEGA Avalanche CUP」 訳すと(なだれCUP)へ参加した。

大会のステージはフランス南東部、ローヌ・アルプ地方。
ツールドフランスの山岳ステージでお馴染みのALPE D’HUEZ(アルプ デュエーズ)で行なわれた。

1995年からラリーレースとしてスタートしたアバランチCUPは今年からステージレースとなり、
今回参加したアルプデュエーズでの大会が最大で最終ラウンドになりました。
参加者は17ヶ国から、27名の女性ライダーを含む1200名。
15歳から50歳代の勇敢なライダー達、
経験豊富な30代の参加者が多くみられた。

大会日程の25日は参加者のゴンドラ乗車がフリーになる正式コースオープンの練習日
翌、26日は1200名による予選ラウンド。
そして、最終の27日が予選を通過した850名のライダーが進める決勝ステージ
MEGA Avalanche CUP レースとなっていた。

予選ラウンドは決勝のMEGA Avalanche CUPのコースとは全く別のコースが用意されていた。
コースは全長約15km、標高差1460メートル。
タイムアタック形式で200名ずつ、6組、20分おきのスタートで行なわれた。
予選のコースはロックセクションとうたっているだけあり、スタートから上半身にこたえる厳しいコースだった。
レース結果が決勝への切符とスタート順、
位置が決まるまでどのライダーも決勝以上に興奮し、迫力のあるスタートが見られた。
ヘリコプターが飛び立ち大音量が鳴り響く、
アナウンスの声とファンファーレがなりコーステープが頭上に上がって200名がスタートして行く!
フルフェイス、ダイネーゼに身を包んだ200名のライダーが
ガレた林道をスイッチしながらスーパーダッシュで滑降していく様は、
弱肉強食的争いというか、サマーセールのおばちゃん状態。
1人がこけるとワラワラとドミノ倒しになる。
スタートの山頂から見下ろしているとコースの距離で言ったら3000m先、200名のライダーが消えるまで10分、
トップのライダーが2mmの大きさになった頃にはアリんこの行列になった。
プツンととり残されたアリはおそらくパンクかメカトラにあった不幸なライダー。
寒さに震えながらもいい物を見せてもらったと感動している場合ではない。
トップグループのスタートが終わると、早くも次へのスタートにむけて多くのライダーがラインの研究を始めた。
5組目スタート、850番と呼ばれ並んだ。27名の女性ライダーと横一列になった。
ゴールしようねって隣に並んだスーパー大っきいライダーと握手を交わした。
感動とドキドキで半泣き状態の私に勇気が湧いた。
上りあり、担ぎありのスーパーダウンヒル、いや?15kmのフリーライドレース初体験は
200人のライバルの中で119位の通過となった。

その日の夜、予選ラウンドのリザルトが発表され、
MEGA Avalancheへの参加メンバー850名のスタート順位が決まった。
決勝はいっせいスタートになるので、上位から約33名ずつ、A組、B組、C組〜Z組までに振り分けられた。
私はU組みにエントリーされ21列目のスタートとなった。

27日 MEGA Avalanche CUP 当日、晴天。
朝4時に起きて体調を整える。
大会コースはALPE D’HUEZ(アルプ デュエーズ)山群の一つである
PIC BLANC(ピックブランク)山頂、標高3300mから
山群のふもとにあるALLEMONT(アラモント)までの全長約28km、高低差約2580m
ゴンドラステーションう2駅乗り継ぎ、いっきにスタート地点まで行く。
9時30分にレーススタートの予定が、ライダーのピックアップに時間がかかり2時間遅れのスタートとなった。
山頂の景色は過去に見た事のない素晴らしい山々、目に入るもの全てに感激した。
氷河と残雪でまだ青白いスタート地点はとても寒かった。
スタッフからはスタートを待ち凍えるライダー達に甘くて温かい「ココアにウォッカ」の入ったHOTドリンクがふるまわれていた。
もちろん私もゴクリ。
続々と並べられていく850台の自転車とライダーは上から見下ろすと
大集団で何かの塊のような、見た事のない異様な光景だった。
これから走る雪山と氷河の上を飛ぶヘリコプターも小さく見えた。

11時30分頃、予選を遥かに上回る迫力ある大集団のスタート!
中にまみれている私は周りにいるライバルの背中とマウンテンバイクの中に沈んでいた。
合図から30秒、やっと私のグループが動き出す。
雪山と氷河、5キロの大滑走、マウンテンバイクのなだれが始まった。
「幅200mのコースはどこを走ってもいい」・・?
私はとにかく前方にいるライダーの塊に必死でくっついて行くしかない。
雪上は半解けでマウンテンバイクに乗ってのコントロールは難しい、
私はバイクを押して走って走って走りまくった。
よろけて転ぶと「ウララ〜!オ〜マイガ〜!」罵声が飛んでくる。
あっちでガッチャーン!こっちでは一人前転、
だれもが我先にと争っている様が目に入ってくるとメチャ苦しいはずなのに笑えてきた。
氷河の上は凹凸が激しくフロントタイヤのクイックが弛んでしまうほど。
ツルツルゴツゴツは滑って転んだらマジで痛そうだ。
雪上が終わってキャメルバックの水を飲み、サドルを上げて、残り約25kmへ気合を入れ直す。
中間地点のゴールまでは木のない山の斜面に一本のシングルトラックが横断している7kmは続いていただろうか?
超長いトレイン、行列?延々下った。
途中、川を渡り、担いで押したり、全部で300mほどヒルクライムもあった。
中間地点の下界に戻ってエイドステーションでまずい炭酸水をゴクリ、
あ〜止まらなければ良かったと後悔、そして30秒のタイムロスはしただろう。
後半戦、ここから5kmはクロカンさながら上ったり下ったり、「なんでフルヘルかぶって全身プロテクターなのか・・」と思いつつ
軽快に漕ぎ進んでいく足のあるライダーを何人も見送った。
私は心臓がマックス状態だ。
下りだというのにメチャ苦しかった。
最後約7kmは森の中のシングルトラック。
富士見パノラマBコースがきつくなったような感じの所が続き、ブレーキを握る手に限界が近づいていた。
何よりもそれが一番きつかった。
大会観戦者の応援の声がだんだん増えてくると、ようやくゴール近辺のアナウンスが聞こえてきた。
もう少しでゴールできる喜びとは裏腹に、まだまだここで走っていたい気持ちが込み上げていた。
結果は目標達成!
567位で「完走したよ!」

コース全部を紹介できないのが残念だが、XCレースでもDHレースでもないレース、
それが「フリーライドレース」なんだと実感し、その魅力をおおいに感じる事ができた。


<レース結果>
大会参加者数 約1200人 (女性27人)
MEGA Avalanche CUP エントリー850人
完走者 737人 (女性18人)

1位 WILDHBER Ren   SUI   INDIAN SUMMER (ORENGE) 53:04.26(シニア1位)

2位 BALAUD William   FRA   FMP (ROCKYMOUNTAIN) 54:54.39(シニア1位)

3位 PERIDY Samuel   FRA (VTTMEG) 55:53.60(マスター30 1位)

357位 RENOUX Sandrine   FRA   BMXLACOLLESU (VPROESS) 1:36:31.99(女子1位)

413位 坂中 栄三   JPN 1:41:29.69(マスター30 84位)

567位 杉山 美佐   JPN   DD BIKES (KUWAHARA) 1:55:32.19(女子8位)




総合優勝はスイスのライダーWILDHBER Renが3連覇を成遂げた。
最終ライダーは 2:49:49.26 でゴール。
レースのスタート位置と、力の差が2時間のタイム差を生んだと思われる。
トップライダーは本気で勝ちに来ていただろうし、
レースを楽しんで走ったライダーも数多くいただろう。
タイムに関係なくゴールした誰もが同じ喜びを感じていたと思う。
MEGA Avalanche CUPを完走できなかったライダーへも
同じステージでスタートしてゴールを目指した同じ参加者としてエールを送りたいと思う。


<ニコラ ブイヨ>
今年からワールドカップを引退してフリーライドレーサーとして活躍中のニコちゃん。
今回のレースでも人気者で予選のスタート直前、カメラに笑顔を送ってくれた。
MEGA Avalanche CUPではスタートしたが、
今回は残念ながらリアメカ破損の為、完走ならずでした。
来年も、もちろん完走を狙ってくるでしょう。


<バイク・プロテクター>
フロントサス120〜150mmストローク、リア5〜6インチストローク
フロントギア3枚仕様でアップハンドルのバイクがほとんどだ。
タイヤの太さは2.2〜2.35のダウンヒル系が多く使われている、
種類はさまざまで、雪上対策な人や上りにかけている人など個性的で面白かった。
バイクもメチャDHな人からハードテールな人まで、大会にバイクチェックがないため、
ローカルライダーなんかは予選と決勝で使うバイクやタイヤを換える事が可能だっただろう。
・キャメルバックと工具、パンク修理キッド、スペアチューブの装備。
・フルフェイスヘルメットにプロテクターはフル装備。
・アイウェアーはゴーグルよりサングラスのライダーが多かった。
・服装はDHスタイルのライダーが多かった。
・グリップは雪で濡れるので防水対策が必要。
・全コース漕ぎたかったらフロントギア3枚は必需品。
・サドルポジションの高さが換えられるクイック式がお勧め。
・サスペンションはロックアウトできるようなものであればタイムアップにつながるでしょう
最近よくあるシングルクラウンで150mmのサスは理想的だ!
・タイヤは太すぎたりゴツイとパンク修理が大変。
・山頂での寒さ対策が必要。


<補給食>
練習でもかなり長いライディングになるので気軽には帰ってこられません。
いつでも飲料水とゼリーなど、簡単に摂取できるものが必要。


<試走>
とても気軽に2回は走れません。
ちなみに25日のコースオープン日は朝から張りきって、決勝の全コース1本を走ったらへろへろで
肝心の予選コースは半分も走れずじまいで夕刻の6時を回っていた。
・レース前に長く滞在できるなら余裕をもった練習がお勧め。
・予選の全コースと、雪山セクションは必ず練習したほうが良いだろう。
・体力に自信のある方は8時頃までは明るいのでがんばってー。
・コースは距離にすると95%は下りで5%が上りになるが、
時間にすると全体の15%は上りになるので、日頃の持久トレーニングは必要だ。
・ロックセクションはゴロゴロと石のある所、岩々した所、
10m以上ある大きな石の上など、さまざまなタイプのロックセクションがある。


<洗車>
今回は水不足のため洗車場は無く川で洗ったりバケツとブラシが活躍した。
洗車キッドが必要。


<宿>
アルプデュエーズのスキーリゾートはとても大きいので当日観光案内所で探してもOK牧場だ。
★★★ホテルから素泊まりホテル、コンドミニアムとさまざまで、
今回は当日予約の一泊4人が利用できる8000円位のコンドミニアムを3人で利用した。
リゾート内にはスーパー、スポーツ施設(プール、スケートリンク、ビーチバレーやテニスのコートとさまざま)
レストラン、バー、酒屋、自転車店、スキースノーボード店あり
(足りない自転車パーツや修理はこれらのショップでなんとかなった)


<ケガ人>
過去のアバランチェCUPにおいて、3回ヘリコプターの出動はあったが、
命にかかわるような事故はなく、ケガ人に対するレスキュー体制はいつでも準備できている。
一番必要なのは自分で身を守れるライディング知識と身体のガード。


<うんち>
・コース脇には動物、牛君の物がおちています。不運を呼ばない要注意!
・山項にトイレはありません。



広大な山々に恵まれているヨーロッパでは
今回のような下りがメインのフリーライドレースが盛んに行なわれているようだ。
力の差があっても同じステージで楽しめるし、
メチャ高価なバイクじゃなくてもトライできるフリーライドレースがいつか日本でも実現できたらなと思う。
オーガナイザーの女ボスのマリーさんが語ってくれた。
「誰もが走れるコースと大きな山をみつければチャンスはあるのではないでしょうか?」と・・
日本からはEiso君と私の2人がエントリーした。

皆さんもチャンスがあれば是非トライしてみて下さい。


今回のレースではスイスに在住し、ヨーロッパのフリーライドレースを走りまくっているEiso君のアドバイスを受け、
奥様の珠代さんと共に楽しい旅を過ごしてきました。
「2mmの虫にもデッカイ塊!」(アリんこポンス)の絵本を何度も読んでくれた父と母。そして妹。
今まで支えてくださったスポンサーの皆様、職場の方、沢山の友達に
今回ALPE D’HUEZの山で完走できた事を感謝いたします。
「ありがとうございました」

2003.8.2  杉山 美佐